
KAKEZAN 2026開催: Woven Cityで広がるAIとイノベーション、そしてモビリティの可能性
KAKEZAN 2026は私たちにとって大きな転換点となりました。これまで、交通事故ゼロ社会の実現、そして幸せの量産を目指し、トヨタとウーブン・バイ・トヨタ(WbyT)が描いてきた、人・モビリティ技術・インフラがつながる未来が、単なる構想ではなく、一歩ずつ現実へと動き始めていることを示す場でした。
2026年4月、モビリティのテストコースであるWoven Cityで開催されたこのイベントの今年のテーマは、「Heritage × Innovation」。会場となった「Woven City Inventor Garage」は、かつてモノづくりを支えてきた東富士工場が、Inventorsが開発・実証し、改善する拠点へと生まれ変わった場所です。
5日間にわたる会期中、国内外から多くの社内外のステークホルダーが集い、展示を見学しながら、技術の背景や可能性について対話を重ねる姿が、会場のあちこちで見られました。
そうした対話や熱量が重なり合うことで、未完成の街だからこそ感じられる、Woven Cityならではの空気が生まれていました。
なぜ私たちはこのイベントを開催したのか。
その理由は、単に新しい技術を紹介するためではありません。
次の100年を動かす、「カケザン」という考え方
トヨタグループの源流である豊田自動織機が創立100周年を迎える今、織機からクルマ、そして「モビリティ」へと、技術と挑戦のかたちは進化を続けてきました。その歩みの根底にあるのは、「自分以外の誰かのために」という変わらない想いです。
この想いについて、WbyTの代表取締役CEO 隈部肇は、基調講演で次のように語りました。
「この100年間をつないできたのは、技術や資本だけではなく、『誰かのために』という想いだったと、私は思っています...『誰かのために』という変わらないフィロソフィーを土台に、これまでとは違うスピード、違うスケール、違うアプローチで、未来をつくっていきます。」

そして、KAKEZAN 2026は、さまざまな専門家やチーム、企業が集い、そのフィロソフィーを具現化する技術を共創する機会となりました。まさに、トヨタの次の100年を形づくり、人の可能性を拡げる技術です。
SVP兼Head of Woven Cityの豊田大輔は、この場所に自らの意思で飛び込んで下さった方々への深い感謝を示し、「失敗しても前に進める街」へ進化させる決意を語りました。そして、未来を実装していく「場」としての街の役割を、基調講演でこう語ります。
「この場所はかつて、トヨタ自動車東日本の工場として、のべ7000人が働き、53年間にわたり752万台の車を生産してきた場所です。ここには、『モノづくりの魂』があります。私たちは、このトヨタで培ってきた力を、クルマだけではなく街へと広げ、技術や人が交わる『カケザンの場』にしていこうとしています。」

また、会期中には取締役CTOのジョン・アブスマイヤーや各領域の責任者も登壇し、トヨタとのパートナーシップを基盤に、AIと組織・業界を越えた「カケザン」によって、イノベーションを社会へ展開していく取り組みの現在地が語られました。
交通事故ゼロ社会は、決して一社だけで成し得るものではありません。トヨタのモノづくり、WbyTのソフトウェア、Woven Cityに集うInventorsの発想。それぞれの強みを掛け合わせ、まだ世界にない可能性や価値を社会へ届けていく――私たちは、その考え方を「カケザン」と呼んでいます。
ビジョンを現実に変えるテクノロジー
会場では、車や産業という枠を超え、「安全と安心」を街全体で実現するための、テクノロジーを紹介しました。その中心にあるのが、Woven Cityのプロダクトやサービス開発を支えるAI技術です。

中でも注目を集めたのが、人・モビリティ技術・インフラが連携して安全を支えるWoven City Integrated ANZEN Systemに活用されているWoven City AI Vision Engineです。視覚と言語を統合的に扱うVision Language Model(VLM)として、世界トップレベルの性能※1を有し、街で起きている出来事を理解し、判断へと繋げます。個人の行動特性の分析に強みを持つWoven City Behavior AI、ドライバーの状態に応じて適切な運転行動を導くWoven City Drive Sync Assistといった他の技術と連携します。
Woven City AI Vision Engineはこれ以外にも様々な用途で活用でき、Woven City内でInventorsであるUCCジャパン株式会社の実証をサポートしています。
Woven Cityの根幹を支えるAIについて、豊田大輔は「単なる技術ではなく、街の状況を理解し、先回りして支えてくれる存在」とも表現していました。
さらに、「カケザン」を加速させる以下のしくみや技術を紹介しました。
街中の人・モビリティ技術・インフラから得られる多様なデータを統合し、街全体を一つのシステムとして機能させる統合プラットフォーム。現在では規格やメーカーごとに分断されているデータや制御の違いを吸収し、車やロボット、各種設備をシームレスに連携させることができます。このようなシステムを内製で開発・運用しているからこそ、実証のニーズに迅速かつ柔軟に対応することができます。
「データを活かすこと」と「プライバシーを尊重すること」を両立させ、個人情報を安全かつ柔軟に管理するための仕組み。データ提供が必要な理由や目的、対象となるデータ項目及び利用の諸条件、データ提供先の性質を踏まえて、データの提供を都度選択できるようにしています。この技術によって、個人のプライバシーを守りつつ、より柔軟にデータを共有・活用することができ、ひいては安心・安全で暮らしやすい社会の実現が可能となります。
Woven City Digital KAIZEN Platform
オペレーションデータの収集・分析を可能にし、実世界に導入する前にさまざまなソリューションをデジタル上でシミュレーション・検証できる環境を提供。これにより、製造や物流をはじめとするさまざまなモビリティ領域におけるカイゼンを加速します。
EV群のバッテリーをエネルギー源として活用するシステム。停車中のEVを巨大な蓄電池として捉え、そのエネルギーを最適に活用できるようマネジメントします。このシステムにより、駐車場等の施設がエネルギーを生み出す新たな社会インフラへと変貌し、社会全体の脱炭素化と企業のESG経営に貢献します。環境に優しく、エネルギーの安定化も実現する、社会にとってより良いエネルギー活用を可能にする技術です。
ロボットに関するサービスや技術開発を加速するためのプラットフォーム。シミュレーションなどの開発環境ソフトウェア、様々なアイデアを検証できるハードウェア群、自動ドアやエレベーター等の環境インフラへの連携システム、モノの移動や人々の生活を支援するトータルロボットシステムで構成されています。

Woven Cityの技術に加えて、その他の重要な開発領域における進捗についても紹介しました。具体的には、Areneが標準化された開発環境で再現性の高いテストや高度なソフトウェアの品質管理を通じて、トヨタのソフトウェア定義型車両(SDV)への移行をどのように支えているのか、さらに、Automated drivingの分野では、実世界のデータと独自のアクティブ・ラーニング・ループを活用し、運転支援から完全自動運転まで拡張可能な、単一の量産レベルのソフトウェアスタックを継続して構築していることについても説明しました。

Tech Talk : 未来を支えるしくみをめぐって
会期中には、複数回にわたって Tech Talk も開催されました。
そこでは、モビリティの未来を支える技術やしくみについて、また各チームの複雑な課題への向き合い方など、さまざまな切り口からプレゼンが行われました。
各 Tech Talk の内容は、以下の項目からブログへアクセスできるよう、リンクを順次追加予定です。
Woven City Data Fabric | Data Analytics Enablement Head of Data/シニア・スタッフ・エンジニア リッキー・タルザリー
Woven City Digital KAIZEN Platform | Digital Twin Platform シニア・スタッフ・エンジニア 加賀 智幸、シニア・エンジニア ギヨム・デ・ルストランジュ
CitySim: Woven City Simulation | Behavior AI スタッフ・エンジニア 渡部 生聖
Woven Cityで使われているIoTプラットフォーム概要とAI活用を目指して | IoTプラットフォーム シニア・マネージャー 安斎 鉄之伸
SDV:産業の革新的変化 | Arene VP 兼 Head of Arene ジャンフランスワー・カンポー
自動運転における機械学習 | AD/ADAS VP 兼 Head of Global AD/ADAS ドゥシャント・ワディブカー
Woven CapitalとWHILLが描くモビリティの未来 | トヨタ・インベンション・パートナーズ株式会社 代表取締役CEO / ウーブン・キャピタル チーフ・インベストメント・オフィサー兼パートナー加藤 道子、WHILL株式会社 CFO 五宝 健治
テクノロジーが息づく、現場の風景
こうした技術やしくみが、実際に使われ、磨かれていく現場として、会場内にはInventorsを紹介するエリアも設けられていました。
20を超える仲間が集まり、AI・デジタル技術、自律走行モビリティ、パーソナライズされた機能的空間、最適化された栄養といった領域に加え、エンターテイメント、教育、コミュニティづくりなど、幅広い分野で進められている挑戦が紹介されました。
それぞれがどのような未来の実現を目指して開発を進めているのか、そして他社やトヨタグループ各社、私たちWbyTと、どのように連携しながら協働していくのかについても紹介されました。
会場で特に高い関心を集めた展示の一つが「豊田章男AI」です。Woven CityのMaster Weaverである豊田章男もInventorとして参画し、リーダーに必要な指針をトヨタグループに伝えながら、トヨタおよびWbyTのエンジニアとともにカケザンの取り組みを通じて自ら牽引しています。会場では30分ごとにデモンストレーションが行われ、多くの来場者の注目を集めていました。

また「Toyota Woven City Challenge」のファイナルピッチも行われ、審査の結果、4つのチームが受賞チームとして選出されました。選ばれたのは、Aerial Base、アイリス株式会社、株式会社JOYCLE、株式会社パブリックテクノロジーズの4チームで、今後はWoven Cityの公式Inventorとして参画を予定しています。
そのほかにも、トヨタグループ創始者・豊田佐吉の最初の発明品である豊田式木製人力織機の織物体験や、e-Paletteを活用したドリンク販売やコンビニ店舗、社員によるチョークアートなどが会場を彩りました。

来場者の皆さんにも、こうしたさまざまな取り組みや体験を通じて、Inventor Garageによるクリエイティブなコミュニティ空間が、どのような場になりつつあるのかを感じていただけたのではないでしょうか。
カケザンは、まだ始まったばかり
「カケザン」とは、異なる産業の多様な強みを掛け合わせることで、社会により大きなインパクトをもたらすソリューションを生み出していくという私たちのアプローチです。
その実現のためには、人と人がつながり、関係を築き、アイデアをオープンに共有しながら共に育てていける場をつくることが欠かせません。そうした場から新たな可能性が生まれ、人中心の価値が拡がり、交通事故ゼロとすべての人の幸せの量産をめざす、モビリティの未来へと向かっていきます。
カケザンは、まだ始まったばかりです。
Woven Cityでは、これからも技術が試され、対話が生まれ、想像を超えるカケザンが育っていきます。この未来は、私たちだけでつくれるものではありません。
だからこそ、この未完成の街で、皆さまと一緒に次の一歩を重ねていきたいと考えています。

今後数週間にわたり、Tech Talk動画を順次公開していく予定です。
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ご参加いただいた皆さま、誠にありがとうございました。
以上
※1 MVBench Leaderboard(動画理解AIの性能評価ランキング)調べ